ねぇ。チューしようよ。
こんにちは。本日もお立ち寄り有難うございます。
本日は私の施設にいるかわいいおばあちゃん。クレさんのお話です。
とても茶目っ気たっぷりのかわいいおばあちゃんです。
認知症を患っており時折不穏になってしまいますがとても優しい方です。
クレさんの毎日はホームシックで涙したり、施設のみんなとお茶をしたりゆっくり静かに流れていきます。
そんなクレさんにはお気に入りの介護士がいます。男性の若いお兄さん。
物腰柔らかな気の利く介護士です。
「ねえねえ、隣に座りなさいよ。」
「ちょっと、ちょっとこっちに来なさいよ。」
お兄さん介護士を見つけると相手をしてほしくて声をかけます。
ある日私とクレさんがテレビを一緒に見ていました。そこにお兄さん介護士が仕事をしながら前を通りすぎました。
するとクレさん。
「ちょっとあんた。あの人を呼んでちょうだい。」
「クレさん。何か用事ありますか?今彼はサービス中なので私が聞きますよ。」
「お仕事中なのね。」
「そうなんです。ごめんなさいね。」
「そしたらあんた。こういって伝えて頂戴。私が泣いているから傍に来てって。」
「あら、クレさん。泣いていないじゃないですか。私嘘ついてお兄さんを呼ぶことできませんよ。」
「わかったわ。ちょっと待ってて。今泣くから。」
「?」
クレさん。目にすごく力入れて一生懸命ナミダを流そうとしています。
「クレさん、そこまでしなくても…。」
「大丈夫よ、もう少しでナミダ出ると思うから。」
結局涙は出ずに呼ぶことはありませんでしたが仕事を終えたお兄さんがテーブルをはさんで向かいに座ってくれました。
「〇✖△□」
クレさんがお兄さんに何かを話したのですが声が小さくて聞き取れません。お兄さんは「何?」と身を乗り出しました。するとクレさん。
「チューしようよ。」
お兄さん崩れ落ちました。私は隣で大爆笑。
「クレさん。こんなみんないっぱいいるところでチューなんかしちゃったら僕仕事辞めなくちゃならなくなるじゃないですか!」
「あらそうなの?それもいいんじゃない?」
「仕事なくなったら僕生活できなくなりますよ!」
「そしたら私と一緒にここに住みましょ。」
「クレさん、僕結婚しているんですよ!僕の奥さんどうするんですか!」
「簡単よ。別れればいいじゃない。私と結婚しましょ。」
またもや崩れ落ちるお兄さん。そして私は隣で大爆笑。
「僕、奥さんに別れましょう、なんて言えないですよ。」
「ジタバタしないで覚悟決めて私と結婚しなさい!!」
とクレさんの一括!ごめんなさい。私お腹かかえて笑ってしまいました。
「ねえ。クレさん。そんな困らせるようなこと言っちゃだめですよ。お兄さんだって家族いるんですよ。クレさんにも大切な家族いるでしょう。もしクレさんとお兄さん結婚したらクレさんの息子さんのほうがお兄さんより年が上になってとっても複雑になってしまいますよ。」
「あら。そうなの。残念ね。」
クレさんようやく引き下がってくれました。クレさん意外と積極的なタイプでした。
いつもゆっくりと時間をすごしているクレさんの思わぬ一面と乙女心とを感じられる出来事でした。
ちなみに介護士のお兄さんはめちゃめちゃ焦りまくっていましたよ。
なんかホッコリとした気持ちになりました。